網走、再び訪れて〜消えたホテルのミステリー〜
１９９７年８月１６日、早朝、私は再び網走の地を訪れた。今回は知床半島に行く途中であった。
前回は流氷を見に１９９６年の３月中旬にこの地に初めて来たのであったが、その時は宿をさがして強烈な寒さを経験したのであった。その時の模様はホームページの「網走の寒さ（北海道初体験 ｉｎ 網走）」を参照してほしいが、宿をさがしている時に強烈な寒さを体験したのだ。
その時は果たしてホテルは見つかった、というか、もともと見つけていた駅前のホテルに決めただけの話であったが。
ホテル・・・、そう言ってよかったであろうか。確かにホテルはホテルなのであるが、失礼ながら何かみかけが非常にあやしげだったのである。一階はどう見ても土産物屋である。そして、外の看板には一泊３０００円と書いてあったと思う（値段は定かに記憶はしていないが、とにかく安かった記憶がある）。結局、土産物屋の上がホテルのようであった。外見的に見てもあやしげだったし、値段がシングルにしては安すぎる感があり、敬遠していたわけであるが結局は寒さに凍えて、また、学生の金銭的に貧しい旅行だったところからもこの宿に決めたわけである。
さて、泊まって見るとあやしげな外観とは裏腹に、中はきれいな普通のシングルの部屋だったし、風呂は共同（バス付きの部屋は高かった）ではあったがきれいで、しかも宿代は安いわけで非常に得した気分であった。また、宿のフロントの人が良い食堂（何か安くてたらふく肉を食べさせてくれるところ）を紹介してくれたりして、いい思い出としてこの宿は印象に残っていたのである。
さて、この宿はお世辞抜きで駅から０分の角地にあった。今回、１９９７年夏に網走駅に降り立った私は、真っ先にこの宿をさがした、というよりまあ眺めようとしたと言った方が正確かもしれない。
ない。本当にないのである。隣のそば屋等記憶に残っている光景はあるのだが、その角地は確かに空き地になっていた。ちょうどその宿のあった土産物屋もろともである。かわりにジュースの自動販売機がぽつねんと立っていた。たいして期間は空いていなかった。たかだか１年半ほどである。たかだかと言うのは語弊があるかもしれない。１年半というときを長いと取るか短いと思うかは各個々人の価値観やその状況等に依存することかもしれないからである。
何にしてもそのホテルはなかった。何か栄枯盛衰、時の移ろいといったようなものを感じた。１年半の間に思いいれのあったホテルが無くなったのである。
考えて見れば、どんな建物も永久に同じ姿をしているものはない。今回のようにドラスティックに壊されるという場合もあろうが、そうでなくて現存していても時が経てばどこかの箇所は腐食したり破損したりするであろう。この時の経過を非常に短く考えると、今見た建物の一秒後はやはり違った姿のものであると言えるのであろう。まあ、ここらへんの議論は哲学者なり数学者なりにまかせるとしよう（確かデカルトがこの様なことについて論じていたと記憶している）。ただ、旅で受けた印象と言うのはその時一瞬のものであってそれを後にリピートしようとしても、端的に言ってそれは不可能なことなのであろう。
何気なく感じた旅の一瞬、それは何にも変えることができない貴重なものなのかもしれない。
Photo at my second visit to Abashiri
(一緒に行った友人にデジカメ画像を提供していただきました）
◎ 消えたホテル跡地
◎ 旧網走刑務所正門
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